学術雑誌論文 里山資源の活用に向けた伝統的・科学的智恵体系の変化と展望

西村, 俊

10pp.14 - 24 , 2017-01-31 , 自然文化誌研究会
ISSN:1880-3881
内容記述
自然から得られる資源を、薪や炭、繊維(麻、綿、絹など)、染料(草木、藍など)、香料などへ加工し、生活や産業の基幹資源として利活用した生活が古くから営まれてきた。その後、産業革命、海外との貿易競争、あるいは自然災害による生活再建の道のりの過程の中で、それまでの第1~2次産業を主体とした生活・産業の風景は、石油化学製品を主軸とした生活・産業へと移り変わり、現在では第3次以上の産業(第7次産業化とまで言われ始めている)を中心とした多様で、複合的かつ複雑な産業構造を基盤とする生活が営まれている。その変化に伴い、里山で生業として伝統的な知恵を鍛錬しながら天然資源を利活用してきた生活文化も徐々に遠い存在となり、特に里山資源を有する中山間部・農山漁村の生活文化圏の維持は、共同体としての体力の衰えと共に、あと10 年!あと10 年!と警鐘されながら年々難しさが増している状況にある。 一方、かつての多様な天然資源を生かした基幹産業は徐々に縮小を余儀なくされ、これまでの大衆的な流通網からは離れたものも多いが、ある一定数の個人をターゲットとした高級品・贈呈品(例えば、備長炭、オーガニックコットン、民芸織物、藍染め作品等)として、ブランド力の更なる強化あるいは新しいアイデア・革新さを付与した製品へと価値を高め、新たな販路を築く動きも見られるようになってきている(ジャパンブルー〈藍〉の商品化、水引き工芸を使った新しい装飾品の創成など)。さらに、中山間地域では、古代から受け継がれている天然資源を生かした生業や生活スタイルから培われる世界観の一端を学ぶことで、時代を超えて継承されてきた知恵体系の意義とそれを活かした新しい生活様式の形成を模索する動き(情操教育の場)も広がりを見せている。 また近年では、化石資源の大量消費に伴う地球温暖化・環境負荷の拡大への懸念から、持続的な生産が可能な天然物由来資源(バイオマス)を化学変換することにより、化成品やエネルギーを生産するバイオリファイナリー技術の研究開拓が注目されている。里山に蓄積された天然資源を基盤とした次世代の産業構造への展開を指向する新たな変革の一つとして、意義深い流れである。 ここでは、里山資源の活用に関する伝統的・科学的知恵体系から紡がれる新たな取り組みについて、その動向と今後の展望に関して話題提供を行いたい。
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https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/14719/1/22553.pdf

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