紀要論文 The Right to Die and Human Dignity : The California Natural Death Act as a Case Study

Tomita, Yoka

16pp.59 - 74 , 2016-03 , 東京大学大学院総合文化研究科附属グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター
ISSN:13462989
NII書誌ID(NCID):AA11562201
内容記述
本稿は、全米で初めて末期患者の意思表明である指示書に法的効力を与えたカリフォルニア州自然死法を事例に、アメリカにおける尊厳死をめぐる論争を考察する。1976 年に成立したカリフォルニア州自然死法は末期患者の生命維持装置の取り外し、または不使用を要請する指示書を法的に認めた。法の反対派と交渉を繰り返し、修正を重ねた結果、非常に制約の多い法律となり、利用できる患者は限られていた。従来の研究ではカリフォルニア州自然死法の限定的な側面が取り上げられてきたが、本稿がこの法を分析する上で着目するのは、人間の尊厳の概念、とりわけ自然死法の発案者であるカリフォルニア州下院議員のバリー・キーンの尊厳の解釈である。急速に進歩する医療技術や患者の意思が重視されない現状に危機感を抱いたキーンは、今まで難しいとされていた死の法制化に挑んだ。当時のアメリカでは延命治療の拒否権は存在していたものの、キーンはその権利を行使する手段が不明確であると考え、日々進化し続ける医療技術に対応する術を法的に確保する必要があると訴えた。過度な治療を患者の尊厳に対する侵害と捉え、自己決定権を重要視したキーンの思想はカリフォルニア州自然死法に投影された。今まで提案された尊厳死法や自然死法は主に自己決定権と命の尊さという二項対立的な枠組みのもとで議論されていたが、カリフォルニア州自然死法は人間の尊厳を医療技術に結び付け、新たな軸を導入した。自然死法において急速に進歩する医療技術は人間の尊厳、すなわち患者が考える自分らしい生き方やあるべき姿を脅かす存在として位置づけられた。本稿は、カリフォルニア州自然死法が人間の尊厳という概念を現代の医療技術につなげ、尊厳死をめぐる議論の軸をより複雑なものにしたことを指摘した。
論文
Articles
本文を読む

https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=47591&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1

このアイテムのアクセス数:  回

その他の情報