紀要論文 Reconsidering the Relation Between Shunpan and Nichiren : Focusing on Nichiren’s Period of Studies at Mt.Hiei
俊範教学と日蓮への影響関係についての一考察 : 日蓮の叡山遊学期を中心に

Giglio, Emanuele D.

23pp.1 - 18 , 2015-03-31 , 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部インド哲学仏教学研究室 , Department of Indian Philosophy and Buddhist Studies, Graduate School of Humanities and Sociology, University of Tokyo , The University of Tokyo
ISSN:09197907
NII書誌ID(NCID):AN10419736
内容記述
日蓮遺文には,日蓮自身に帰されつつも彼の真作かどうかについて即断できないという写本遺文がある.その多くは,日蓮没後に初めて文献化された中古天台義の影響下で後代の弟子によって作られた可能性がある.しかし,中古天台義には13 世紀に既に口伝の形で流れていたはずのものがあり,日蓮の真作で明確に扱われる資料もある.問題は,日蓮はいつどこで誰からどのような天台義を学んだか,当時の叡山教学はいかなるものだったか,それは日蓮にどのような影響を与えたかである.本校では,叡山遊学期の日蓮に関わる先行研究を読み直し,その成果を組み合わせることで,叡山遊学期の日蓮とその「師」とされた俊範法印との関係を,写本遺文にも見られる天台義への理解の手段として,再検討していく.俊範の「法華修行得果論」,「法華本門修行論」,「一心三観論」と日蓮に見られるOrthopraxy(正行中心主義)との関係を検討した結果,次の見解に至った.1)叡山遊学期の日蓮は俊範の講義に参加はしたが,単なる一聴講者でしかなく,俊範を日蓮の「師」の一人とする従来の説は後代の弟子によるものである.2)俊範講義の内容ではA)「円密一致」,B)宗教体験としての「智一心三観」,C)それが法華題目の五字「妙法蓮華経」に表されているという理論,D)日蓮の多くの写本遺文と同様な「凡夫」「初心者」の有りの儘を肯定する理論が13 世紀後半には既に存在していた.3)日蓮が当時の叡山で行われていた多種類の宗教的実践方法の中から,付帯的であった法華題目の唱題行を撰びとり,仏道修行の中心へと限定付けたことに,若いころに触れていた浄土系称名念仏と真言系口密への応えと,俊範講義の影響が見られる.4)日蓮の「正行中心主義」への強い方向性と,修行の選択に対して何らかの限定付けを敢えて行わずに宗教体験をどう考えればよいかについて議論し続ける当時の叡山教学の“Orthodoxy(正見中心主義)” との根本的な設定違いが透けて見える.
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