紀要論文 <講義ノート>心と脳のダイナミクス : 数理科学的理解はどこまで進んだか(第61回物性若手夏の学校 講義)

津田, 一郎

6 ( 4 )  , p.[1] , 2017-11 , 物性研究・電子版 編集委員会
内容記述
第61回物性若手夏の学校 講義
物理学は自然現象の本質を物理法則という形で取り出し、人類の宇宙、自然に対する理解を深めるのに貢献してきた。他の自然科学もそれぞれ自然を理解する独自の方法論を提供してきた。他方、経済学・社会学は人間の行動の集合としての社会現象と社会構造を記述することで人間行動への理解を深めるという寄与をしてきた。それでは、数学という学問は何を対象にした学問なのだろうか。20世紀前半のいわゆる「ヒルベルトの23の問題」以降、数学はその内部で独自の運動を繰り返し、数学の数学による数学のための学問として独自の発展を遂げてきた。しかし、20世紀より以前、あるいは古代ギリシャ、さらには古代エジプトまで遡りその素朴な現れを見れば、それは人々の欲求、行動を形にするための表現であったことが首肯されよう。私は一般に数学という学問は人の心、それも抽象化された普遍的な心の表現だと理解している。このような観点から、脳のダイナミクスは抽象化され普遍化された心が個々の脳という物理世界を通過するときに現れる心の痕跡であると考えるようになった。脳のダイナミクスに埋め込まれた数学を抜き出すことで、脳の発展と活動を支配する心の法則を発見することができるだろう。本講義では、この心と脳のダイナミックな過程において脳の中に埋め込まれたはずの数学を抜き出す一つの試みを紹介する。私たちは脳を複雑系の典型と捉えてきたので、まずは複雑系科学の歴史を振り返る。次に、脳ダイナミクスのカオス力学系による理解に関して現在までに分かったことを講義する。記憶、思考・推論がどこまで数学的に理解でき、また数理モデルによる予測がどこまで実証されたかにも触れる。さらには、自己制御系としての脳と心を数学的に定式化するにはどうすればよいかについての試論を述べ、可能ならば脳の病態の解明に対する数理科学からの挑戦にも触れたい。
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