紀要論文 4 冠動脈バイパス術の現状と課題(シンポジウム 冠動脈疾患の診断と治療, 第704回新潟医学会)
Coronary Artery Bypass Grafting : Current Indications and Improved Outcome in Japan

青木, 賢治  ,  Aoki, Kenji

130 ( 4 )  , pp.225 - 230 , 2016-04 , 新潟医学会
ISSN:0029-0440
NII書誌ID(NCID):AN00182415
内容記述
冠動脈バイパス術(CABG)の主たる適応は, 3枝病変, 左冠動脈主幹部(LMT)病変であるが, 薬剤溶出性ステント(DES)の登場後, 従来CABGの適応となる多枝病変やLMT病変に対しても経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が試みられるようになってきた. PCIがDES時代に突入し, さらに進化している現在, CABGの適応や冠血行再建術としての位置付けは変わるのか, この問題に関するいくつかの科学的検証のうち, 2013年にLancet誌で発表されたSYNTAX試験の結果が注目されている. SYNTAX試験は3枝病変, LMT病変を対象とし, DESを使用したPCIとCABGの治療成績を比較した前向き無作為試験であるが, 5年追跡の結果, 新規心筋梗塞はPCI 9.7%, CABG 3.8%(P<0.0001), 心臓死はPCI 9.0%, CABG 5.3%(P=0.003)とPCI群でCABG群の2倍近く発生し, 再治療はPCI 25.9%, CABG 13.7%(P<0.0001)とPCI群でCABG群の2倍であったが, 脳梗塞はPCI 2.4%, CABG 3.7%と同等であった(P=0.09). 一方で冠動脈病変の範囲, 複雑性を示す指標であるSYNTAXスコアの軽症例に限ると前述のアウトカムに有意差はなかった. このような試験結果をふまえ, 2014年に改訂された欧州心臓病学会/心臓・胸部外科会議の診療ガイドラインではSYNTAXスコアが中等症以上, つまり3枝病変, LMT病変を含む多枝・複雑病変に対してはDES時代でも従来どおりCABGが第1選択的治療として推奨されている. 今後本邦でもこの試験結果を反映したガイドラインの改訂が行われる見通しにある. CABGの治療成績を改善させる戦略として, 本邦では体外循環を使用しない術式(OPCAB)が普及し, 今や全CABGの60%を占めるようになった. 本邦のCABGは2012年の統計で手術死亡率が1.4%, 脳梗塞発生率が1.0%ときわめて低率であるが, これらの結果にはOPCABの低侵襲性が有意に寄与している. また近年陰圧閉鎖療法の導入によって創感染を容易かつ確実に治癒できるようになり, 静脈グラフトの経年劣化を抑制する試みもはじまっている. CABGは安全かつ長期保障が得られる治療として進化を続けている.
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http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/44373/1/130(4)_225-230.pdf

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