紀要論文 進行性核上性麻痺とアストロサイトのタウ病理学 : 40連続剖検例における臨床病理学的検討
Progressive Supernuclear Palsy and Astrocytic Tau Pathology : a Clinicopathological Study in 40 Consecutive Autopsy Cases

横山, 裕一  ,  染矢, 俊幸  ,  Yokoyama, Yuichi  ,  Someya, Toshiyuki

129 ( 9 )  , pp.505 - 518 , 2015-09 , 新潟医学会
ISSN:0029-0440
NII書誌ID(NCID):AN00182415
内容記述
【目的】進行性核上性麻痺(PSP)は臨床的にパーキンソニズムと認知症を呈し, 病理組織学的にはタウ蛋白の異常蓄積を認めるタウオパチーの中の代表的な1疾患である. 剖検例の検索では, 神経原線維性変化とタウ陽性グリアを伴う変性を脳幹, 基底核や大脳皮質に認め, 房状アストロサイト(tuft-shaped astrocyte; TA)の出現が特徴的である. 本疾患は変性が一般的に広範にわたり, その程度や範囲が症例ごとに多様である. 一方で, Pallido-nigro-luysian atrophy (PNLA)はPSP様の変性が淡蒼球-黒質-視床下核に限局し, TAに似たタウ陽性アストロサイトが少数認められる. このタウ陽性アストロサイトの形態学的特徴は明らかにされておらず, PNLAとPSPを区別する存在になり得るかについての詳細な検討はされていない. そこで, 本研究ではアストロサイトのタウ病理に注目し, PSP類縁疾患剖検例の臨床経過および病理組織学的所見を再検討した. 【材料と方法】病理組織学的にPSPまたはPSP類縁疾患と診断された連続剖検例50例において, 他の神経変性疾患を併存する10例を除外した40例を対象とし, TAの有無(銀染色で判定)によりTA群22例とnon-TA群18例に分類した. 2群のタウ陽性アストロサイトの形態について共焦点顕微鏡を用いた三次元構造解析および電子顕微鏡像による超微細構造の比較解析を行った. 組織学的所見は神経細胞脱落程度およびタウ陽性構造物の出現頻度について半定量解析を行った. タウのイムノブロット解析には各群の淡蒼球の凍結組織サルコシル不溶画分を用いた. 臨床情報は各群について後方視的に解析した. 【結果】Non-TA群では, TAとは大きさや形態が異なり, 短く太い突起を有するタウ陽性アストロサイトを認めた. 3次元構造解析と免疫電子顕微鏡像においてTAとnon-TAでは大きさやタウの凝集様式が異なっていたが, イムノブロット解析ではPSPと区別できなかった. Non-TA群はTA群より視床下核と黒質の変性が高度で, 運動野, 橋核, 小脳歯状核の変性が軽度であった. 臨床的には早期発症, 長期経過, 寝たきりになりにくい特徴を認めた. Non-TA群のうち9例では橋核, 小脳歯状核に変性を認めず, 既報のPNLAと合致したが, 残り9例の病変分布と程度はPSPとPNLAの中間と評価された. 【考察】近年タウオパチーの分類においてタウ蓄積グリア細胞の形態的特徴が注目されている. 本研究では, TAとnon-TAに蓄積するタウ蛋白の生化学的な違いはみられなかったものの, タウ陽性アストロサイトの形態と病変分布によって, 病理組織学的に連続性を持つ3群(PSP群, PSP-PNLA中間群, PNLA群)の存在が明らかとなり, PSP類縁疾患の臨床病理学的多様性を理解する上で重要と考えられた.
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http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/44197/1/129(9)_505-518.pdf

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