学位論文 ランダム行列理論と複素主成分分析 : 株式市場における相関構造への応用

新井, 優太  ,  Arai, Yuta

pp.1 - 82 , 2015-03-23 , 新潟大学
内容記述
学位の種類: 博士(理学). 報告番号: 甲第4031号. 学位記番号: 新大院博(理)甲第396号. 学位授与年月日: 平成27年3月23日
近年、科学技術の発達に伴い膨大なデータの解析が可能となった。その一環として、多変量時系列データ中に潜む有意な相関構造を抽出する研究が盛んに行われている。その際によく用いられる手法の1つとして主成分分析(これによって得られる主成分ベクトルを経験的直交関数とも呼ぶ)がある。主成分分析では、どこまでを統計的に有意な相関構造とみなすのかが非常に重要な問題である。そこで、統計的に有意な相関構造と統計ノイズとを区別するための理論的な裏付けのある判定基準としてランダム行列理論(Random Matrix Theory; RMT)が注目された。RMT では、ランダム変数の相関行列に対する固有値や固有ベクトル成分の分布について、理論的な表式がQΞT=N (データ数:N,時系列長:T)を与えることで一意に定まる。特筆すべき事に、このRMT の導く固有値、固有ベクトル成分の分布がランダム変数の詳細によらず普遍的な性質を持つため、RMT から外れた固有値を有意な相関行列の現れと見なすことができる。それゆえ、RMT に基づく主成分分析を行うことで、実データの持つ本質的で統計的に有意な相関構造の抽出が可能となる。例えば、経済物理学の分野では株価に対してRMT に基づく主成分分析を行った研究が1990 年に初めて報告されており、多くの興味深い相関構造が明らかになってきた。しかし、従来の多変量時系列についての主成分分析では、相関行列を求める際に同時刻の変量間で相関をとっているため、タイムラグのある変量間での相関構造を抽出することは難しい。例えば、本研究で対象とする株価時系列の場合、2つの株式銘柄同士に正の相関があっても、それらの株価変動が同時に起きるとは限らない。むしろある一定時間の遅延が存在する動的(異時刻)相関構造が一般的には考えられる。動的相関構造を抽出することは、データ中に潜む相関構造を理解する上で必要なことは言うまでもない。そこで、まずは動的相関構造を抽出するために、ヒルベルト変換を用いた複素主成分分析による動的相関構造の抽出を行った。次に、主成分分析(複素主成分も含む)では株式銘柄間の詳細な相関構造を理解することには秀でている一方で、株式市場に潜む相関構造を俯瞰的に捉えることは難しい。そこで、本研究では"位相情報を保持した株価相関ネットワーク" の構築・解析を行うことで、株式市場に潜む静的・動的相関構造を俯瞰的に捉える。このようなネットワークモデルは、これまで考案されておらず本研究が初のものとなる。最後に、株式市場に潜む静的相関構造に基いて構築した株価相関ネットワークの研究から、株式市場にはフラストレーション状態にある多極構造の存在が示唆されている。このような状態は、これまで行われてきた多くの研究のように、株式銘柄間の2体相関を考えているだけでは決して現れることはない。より高次の相関を扱うことによって、初めて現れる構造である。本研究では、高次相関解析の第一歩として3体相関に注目して解析を行う。この高次相関を足がかりに、グループ相関とマーケットモードの関係性について明らかにされることを期待する。
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http://dspace.lib.niigata-u.ac.jp/dspace/bitstream/10191/32194/1/h26fsk396_a.pdf

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