学位論文 ヒト造血幹/前駆細胞の放射線応答における ミトコンドリア機能及び遺伝子の関与

山口, 平

pp.1 - 53 , 2016-03-23
内容記述
造血組織内のニッチェと呼ばれる特殊な微小環境に存在している造血幹細胞は,自己複製能及び多分化能といった幹細胞特有の機能を有しており,放射線などの酸化ストレスに対して非常に高い感受性を示す.その幹細胞特性は細胞内ミトコンドリアの生合成,ミトコンドリア由来の活性酸素種を制御することで維持されている.造血幹細胞の幹細胞特性の維持や分化の進行におけるミトコンドリアの重要性は近年明らかにされつつあるが,その造血幹細胞の分化/増殖過程に及ぼす電離放射線の影響と細胞内ミトコンドリアの関連性についての多くは不明のままである.本研究では,X線照射ヒト胎盤/臍帯血由来CD34陽性造血幹/前駆細胞の分化・増殖過程における放射線応答と,細胞内活性酸素種、ミトコンドリア機能及びその関連遺伝子の発現について評価した.先ず,放射線ばく露ヒト造血幹/前駆細胞の分化・増殖におけるROSの役割について検討した(第一章).造血幹/前駆細胞の分化・増殖を誘導するサイトカイン存在下では,X線照射造血幹/前駆細胞は増殖能とクローン形成能を劇的に減少させた.その時の細胞内活性酸素種は,非照射造血幹細胞内と比較して培養時間経過とともに有意に増加した一方,細胞内ミトコンドリアやミトコンドリア由来の活性酸素種は非照射造血幹細胞内と比較して有意な増加は示さなかった.DNA損傷は,X線照射直後に最も多く確認され培養時間経過とともに減少したが損傷の残存が認められた.次に,ミトコンドリアDNA及びその転写関連遺伝子,抗酸化酵素遺伝子の発現と造血幹/前駆細胞の放射線応答との関連を検討した(第二章).ミトコンドリア電子伝達系全体の律速段階となっている複合体1のタンパク質をコードする遺伝子の発現は,照射細胞と非照射細胞間で有意な差は認められず同等のレベルを示した一方,ミトコンドリアDNAのゲノム安定性や抗酸化ストレスに関わる遺伝子の発現が上昇しており,放射線によるミトコンドリアの機能異常を抑制,緩和している可能性が示唆された.本研究の結果,放射線ばく露ヒト胎盤/臍帯血由来CD34陽性造血幹/前駆細胞の分化/増殖過程において,ミトコンドリア生合成及びミトコンドリア由来活性酸素種の異常生成は抑制されており,放射線による細胞のDNA損傷及び持続的な細胞内活性酸素種の異常産生が幹細胞機能破綻を引き起こしている可能性が示唆された.
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http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5963/1/tdh_057_yamaguchi.pdf

http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5963/2/tdh_057_yamaguchi_a1.pdf

http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5963/3/tdh_057_yamaguchi_a2.pdf

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