学位論文 知識の習得に重点を置いた道徳教育の研究-人間行動の自動性に基づく授業開発―

鑓水, 浩

pp.1 - 133 , 2015-03-24
内容記述
(内容の要旨)本研究は、中学校段階の道徳教育において道徳性に関する知識の習得を図ることが、日常的な道徳的な行動の促進につながることを、社会心理学や脳神経科学における人間行動の自動性研究、及び進化生物学における人類の生物的進化研究の知見を中心にした学際的視点によって明らかにしたものである。現在の道徳教育は読み物資料を用いて人間の心情面に焦点を当てるものであるため、結果として道徳性が現実の生活から遊離してしまい、道徳的な実践行動に結びついていかないという問題がある。本研究では、道徳的な行動を促すと同時に反道徳的な行動を統制するには、人間行動の自動性を原理とした知識群を習得することが有効であることを示していく。人間も生物種である以上、遺伝子のコピーを残していくこと、つまり生殖があらゆる行動の最終的な目的である。また、環境中の膨大な量の情報を全て逐一解析してアルゴリズムを算出し、的確な行動をとるといったことは脳の容量からして、とても不可能である。そのため人間の行動というのは、自らの意思によって自覚的に行動しているように思えても、その目的を達成することを第一として、膨大な情報を取捨選択し、さらにカテゴリー化、パターン化して、実際には多くの認知面行動面で自動化されている。だが一方で現代においては、この自動化のために結果としての行動が反道徳的なものとなって多く表出することも現実である。そこで、とかく問題にもつながってしまうこの自動性の原理を応用する形で、道徳的な行動の促進と 、反道徳的な行動への統制に資することができるように道徳教育を焦点化したのである。人間行動の自動性を原理に道徳的な行動を促していく知識として具体的に挙げているのは、大別して次の2つである。第一に、人間が行動をおこす際のリソースとなる知識としての「特性と目標に関連した知識」であり、これは「道徳的ステレオタイプの形成」と「ポジティブ感情の形成と言語表象による客観性の獲得」から成る。第二に、たとえば自己の情動が危険な状態なのかどうかモニタリングするといった自分の状態を知るための手助けとなる情報としての知識としての「メタ認知のための知識」であり、これは「知覚的認知バイアス」と「自己利得的認知バイアス」から成る。さらに、これらの知識群を習得するための授業案として、「特性と目標に関連した知識」を習得するものを4、「メタ認知のための知識」を習得するものを6、合計10にわたる展開例を示した。このように知識を習得するということは、これまでの道徳教育では半ば否定されてきたものであるが、本研究においては、自然科学的な分野を含む学際的な知見を基盤に据えるという、これまでにない切り口で展開している。この研究成果は単に道徳授業の一つの方法を示すにとどまらず、道徳教育において新たな分野を切り開くものである。
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http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5579/11/tdr_29_yarimizu.pdf

http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5579/2/tdr_29_yarimizu_a1.pdf

http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10129/5579/3/tdr_29_yarimizu_a2.pdf

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