Thesis or Dissertation セグロアシナガバチにおける女王在巣コロニーと消失後コロニー間の社会構造の比較

吉村, 英翔

2016 , 三重大学
Description
1.セグロアシナガバチの創設女王消失前後の社会構造を比較するために,ワーカー羽化後の7巣における各個体の巣上での行動をビデオカメラで記録し,解析した。7巣のうち5巣において,繁殖虫羽化前に創設女王が消失した。2巣においてはワーカー羽化前に創設女王が消失したため,観察できた創設女王在巣コロニーは5巣であった。2.各巣のワーカー総数は20頭前後であり,1巣を除いて,遅くに羽化したワーカーほど頭幅は大きかった。観察時間が短かった1巣を除いて,女王在巣中にワーカーによる産卵があった。また,ワーカーによって産まれた卵だけでなく,創設女王の卵も他個体による食卵を受けた。創設女王消失後も女王位継承個体だけが産卵する巣と他の個体も産卵する巣があった。3.創設女王は産卵を独占もしくは優先的に行ったが,優位行動頻度は低く,優劣順位で最上位になることもほとんどなかった。女王消失前に優位行動頻度が高く最優位個体が女王位継承個体となった。女王位継承個体も産卵を独占もしくは優先的に行ったが,継承後も最優位を維持し,優位行動頻度も高かった:特に,継承後は高かった。ただし,女王位継承個体の1個体においては,継承後しばらくは高かったがその後低くなった。4.ワーカー間の優劣順位についてみると,創設女王在巣期間でも消失後においても,老齢優位の傾向が多くの解析期間でみられたが,最老齢個体が最優位にならない場合が多くみられた。優位行動頻度は優劣順位の上位個体ほど高かった。5.創設女王,女王位継承個体とも,多くの場合,自身を除いた個体の中での最優位個体により高い頻度で優位行動を向けることはほとんどなかった。また,最優位個体からより高い頻度で優位行動を受けることもほとんどなかった。6.創設女王あるいは女王位継承個体の行動的特徴を明らかにしようと,外役(肉,液,巣材),巣内での肉団子受取,幼虫への給餌,羽ばたき突進(翅を羽ばたかせながら他の個体に次々と突進する),腹部擦り付け(腹部先端を巣表面に擦り付ける),尻振り(巣内で数秒静止し,膨腹部全体を左右に激しく振動させる)の頻度そして巣での滞在率について調べた。それらに対する優劣順位の影響も調べた。7.肉外役は,創設女王も女王位継承個体もほとんど行わなかった。また優劣順位とも関係がなかった。一方,創設女王は液外役をほとんど行わなかったが,女王位継承個体は巣によって,全てあるいは一部の解析期間で頻繁に行った。また,女王消失前も後も,一部の巣を除いて優位個体がより頻繁に行う傾向があった。巣材外役については,創設女王あるいは女王位継承個体が頻繁に行う巣と,そうでない巣があった。優劣順位の巣材外役頻度に対する影響については,女王消失前と後で優位個体ほど高い場合がある巣が少数あったが,ない巣が多かった。8.創設女王も女王位継承個体も巣上滞在率が一番高いことは少なかった。女王在巣中,滞在率は優劣順位の影響を受けなかったが,消失後は影響を受ける場合が3巣あった。しかし,優位個体ほど高い巣と低い巣があった。9.巣上での肉団子受取,幼虫への給餌については,巣によっては創設女王あるいは女王位継承個体が頻繁に行ったが,そうでない巣もあった。また,それらの頻度に優劣順位はほとんど影響しなかった。10.羽ばたき突進は,創設女王あるいは女王位継承個体が特に頻繁に行うこともなく,優劣順位もほとんどの巣で影響しなかった。11.尻振り行動は全ての創設女王と一部の女王位継承個体のみが行った。尻振り行動によって巣全体が振動するため,振動によってシグナルを送っている可能性がある。また,腹部擦り付け行動も,主に,創設女王と女王位継承個体と,産卵をしている優位個体に限られた。この行動はフェロモンを塗布している可能性がある。この2つのシグナルによって創設女王は女王位を維持していることが示唆された。女王位継承個体もこの2つのシグナルを使っているが,不十分なため優位行動を使って補っている可能性が推察された。
三重大学大学院 生物資源学研究科 博士前期課程 生物圏生命科学専攻 陸圏生物生産学講座 昆虫生態学研究室
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