Thesis or Dissertation 褐藻ツルアラメの生長と繁殖におよぼす水温の影響

戸瀬, 太貴

2016 , 三重大学
Description
コンブ目に属する大型褐藻であるツルアラメは,主に日本海沿岸部の水深2-10mの岩盤上に生育し,海中林とよばれる密な群落を形成する水産的・生産的に重要な種である。大型藻類は水平分布が主に水温によって制限されるため,地球温暖化による水温上昇の影響を受けると考えられる。しかし,これまで行われてきた大型藻類の温度特性は2-5℃刻みの温度条件で研究されたものが多く,地球温暖化の海水温の上昇率から考えると大型藻類への影響を評価する上では不十分であった。ツルアラメは大型の胞子体世代と,微小の配偶体世代をもっており,異形世代交代を行うため,温暖化の影響を評価するためには生活史全体についての詳しい温度特性を明らかにする必要がある。そこで本研究ではツルアラメの配偶体および幼胞子体を用いて生長・繁殖についての1℃刻みの詳細な温度特性実験を行い,地球温暖化の影響を評価する上での基礎的知見の蓄積を目的として研究を行った。その結果,ツルアラメ雌雄配偶体の生長上限温度は28℃,雌雄配偶体の成熟上限温度は25℃,また,幼胞子体の生長上限温度は27℃,成熟上限温度は23℃以下,栄養繁殖の上限温度は25℃であった。他の日本産多年生暖海性コンブ目藻類の水平分布と日本近海の夏季の表面海水温データを比較すると,夏季の28℃の等温線と各種の分布域の南限がほぼ一致していた。このことから,夏季の高水温はこれらの藻類の分布南限の主要な制限要因であると考えられ,地球温暖化による海水温の上昇は将来的にこれらの藻類の水平分布に重大な影響を与える可能性があると考えられた。今後,地球温暖化の影響をより詳細に評価するためには,異なる光周期での高温耐性や低温に対する温度特性,さらに弱光下など異なる環境条件化でのより詳細な生理・生態学的な研究を行う必要がある。これまで明らかにされてきた日本産暖海性コンブ目海藻の温度特性についての知見により,温暖化が進行した場合の分布域の変化予測がある程度可能となった。
三重大学大学院 生物資源学研究科 博士前期課程 生物圏生命科学専攻 海洋生物科学講座
Full-Text

http://miuse.mie-u.ac.jp/bitstream/10076/15383/1/2015M328.pdf

Number of accesses :  

Other information