Thesis or Dissertation レビー小体型認知症者のパレイドリア出現時の瞳孔変動の特徴

鈴木, 由美

2017-03-23
Description
背景 レビー小体型認知症(DLB)はパーキンソニズム,幻視,認知の変動を三主徴とする変性疾患である.幻視とは,実在しない対象が見える現象である.幻視はDLBと臨床診断された患者の70%にみられ,DLBの病初期から認められる重要な問題である.錯視とは,実在する対象が実際とは異なって見える現象である.DLBには錯視もみられるが,頻度の高い錯視にパレイドリアがある.パレイドリアとは,壁の染みやシーツの皺が人や動物の全身や顔に見えるなど,光景の中の不明確な形から実体的で明瞭な対象の錯視が形成される現象のことである.Uchiyamaらは,適切な視覚刺激(パレイドリア誘発刺激)を用いれば,パレイドリアを再現できることを示し,その検査をパレイドリアテストと名付けた.幻視とパレイドリアとは,視覚像として生じる対象,生じる場所などが類似しており,両者に共通の神経基盤がある可能性が論じられている.したがって,パレイドリアの神経基盤を解明することはDLBの幻視を研究する上でも重要である.しかし,パレイドリアテストでは対象者に画像の中にある対象を指さし口述するように求めるため,パレイドリアが生じているか否かの判断は,患者の主観的な報告のみに依存する.パレイドリアが生じていることを示す外から観察可能な生理学的指標のないことが,その神経基盤を解明するための研究,たとえば機能的MRIの施行を困難にしている.瞳孔径は,網膜に届く光の強さなどにもとづいて反射的に変動するだけでなく,より高次な脳機能とも関連して変動することが報告されている.アイマークレコーダーを用いれば,対象者が刺激のどこをみているのか,どのように視線を動かしているのかの情報と同時に,瞳孔径についての情報も得ることができる.目的本研究の目的は,アイマークレコーダーを用いてパレイドリアテスト実施中のDLB患者の発言と画像刺激の注視位置,衝動性眼球運動,瞳孔径を記録し,パレイドリアの出現と瞳孔径変動など生理学的指標の特徴との関係を明らかにし,パレイドリアが生じていることを示す外から観察可能な生理学的指標を見出すことである.方法DLB患者8名と,年齢,性比,教育年数を合わせた健常対照者9名を対象とした.対象者にアイマークレコーダーを装着,ビデオ撮影をしながら,Uchiyamaらのパレイドリアテストを行った.これにより,パレイドリア誘発画像を見ているときの注視位置,衝動性眼球運動,瞳孔径,および言動を記録した.みられた発言を,刺激画像の中にはないものがあると誤って言うパレイドリア発言と刺激画像の中にあるものをあると言う正しい発言とに分類した.DLB患者のパレイドリア発言に先行する瞳孔径変動,DLB患者の正しい発言に先行する瞳孔径変動,および健常対照者の正しい発言に先行する瞳孔径変動の時間周波数を,高速フーリエ変換プログラムを用いて分析した.結果発言に先行する1秒間の0~0.46Hzの低い時間周波数帯域のパワーの変化量には,DLB患者のパレイドリア発言,DLB患者の正しい発言,健常対照者の正しい発言の三者で有意差があった.すなわち,DLB患者のパレイドリア発言前が最も大きく,DLB患者の正しい発言前が次に大きく,健常対照者の正しい発言前が最も小さかった.また,健常対照者の正しい発言前のパワーの変化量の中央値を基準にして,DLB患者の発言を開始直前の1秒間のパワーの変化量がそれより大きい群と,それより小さいか等しい群の2群に分けると,発言前のパワーの変化量が基準より大きいときはパレイドリア発言が正しい発言より有意に多かった.また,変化量が基準に等しいかより小さいときは,正しい発言がパレイドリア発言より有意に多かった.また,同じDLB患者が同じ刺激画像の同じ位置を見ているケースの対を全て拾い出し,その直前1秒間のパワーの変化量を調べても,ほとんどの場合にパレイドリア発言の直前のパワーの変化量は健常者の中央値より大きく,正しい発言の直前のパワーの変化量は健常者の中央値より小さかった.しかし,発言開始直前1秒間の衝動性眼球運動については,頻度にもついて角速度についても,DLB患者のパレイドリア発言とDLB患者の正しい発言の間に有意な差はなかった.
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Hokkaido University(北海道大学). 博士(保健科学)
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