Thesis or Dissertation ホッケ道北群資源の評価手法構築に関する研究 [全文の要約]

髙嶋, 孝寛

2016-03-24
Description
オホーツク海から日本海の後志地方にいたる北海道北部沿岸に分布するホッケPleurogrammus azonus道北群は,年間漁獲量が15万トンに達することもある重要な水産資源である。この資源の持続的かつ安定的利用のために,科学的根拠に基づいた的確な資源評価と資源管理方策の検討を行い,実践する必要がある。そこで本研究では,本種の年齢査定法を新たに確立し,年齢―サイズ関係,漁獲物のサイズおよび年齢組成を検討した++次に,これらの結果に基づいて経年の年齢別漁獲尾数を推定し,Virtual Population Analysis (VPA) による資源解析を可能にした。さらに,雌魚の成熟過程を検討して年齢別成熟率を推定し,VPA解析結果と組み合わせて再生産関係を明らかにした。これらの結果を用いて,産卵親魚量(SSB)管理による加入量制御を主とする本種の資源管理方策について検討することを目的とした++第2章では,耳石(扁平石)断面観察による年齢査定法について検討した。耳石横断面の縁辺が不透明帯である個体の割合は夏季(6~7月)に80%以上,冬季(12~3月)では10%未満であったことから,不透明帯と透明帯とで構成される耳石断面の輪紋は,年周期的に形成されることが確認された。さらに,1月1日を年齢起算日とすると1歳春季~夏季の不透明帯形成に伴って最初の透明帯外縁が形成されると考えられた。このことから透明帯外縁の数を年齢指標数とし,縁辺が不透明帯の個体と7~12月に採集された縁辺が透明帯の個体では指標数をそのまま,1~6月に採集された縁辺が透明帯の個体では指標数に1を加えることで,耳石断面の観察結果を年齢に読み替えることが可能となった。また,得られた結果を用いて年齢と体長との関係を検討し,2歳以上では年齢の増加に対して体長の増加が頭打ちになることが示された。このことから正確な漁獲物年齢組成を得るためには,耳石を用いた年齢査定が必要であると判断された++第3章では,漁獲物の年齢組成を推定する単位を明らかにするために,海域・漁業ごとに漁期と漁獲物の年齢および体長組成について検討した。その結果,本種では漁期を1~6月の上半期と,7~12月の下半期に大別できると考えられた。また,漁場に分布する個体の成長段階や漁具の選択性の相違から,漁獲物のサイズや年齢構成は海域・漁業・あるいは漁期により異なることが示された。これらのことから,道北群の分布海域全体について年齢別漁獲尾数を推定するためには,少なくともオホーツク海,道北日本海,および道央日本海の3海域における,沖合底びき網漁業,定置・底建網漁業類,刺し網漁業類の3漁業種類グループについて,年の上半期と下半期の2つの漁期区分ごとに,漁獲物年齢組成を把握する必要があることが示された。ただし,オホーツク海域については,分布個体が成熟前に日本海側に移動するため,2歳下半期以降の個体がほとんど漁獲されないことから,年齢査定を省略して体長組成および漁獲物銘柄組成から直接に年齢組成を推定することが可能であることも示された++第4章では,耳石あるいは年齢査定結果が保存されていないため年齢構成が不明な過去の体長組成データを用いて年齢組成を推定するために,2003年以降の標本を第2章で確立した方法により年齢査定し,道北日本海および道央日本海について漁業種類・漁期ごとにAge-Length Keyを推定した。これらのAge-Length Keyと体長組成を用いて,1985年から2003年までの道北および道央日本海における年齢別漁獲尾数を推定した。これらと,標本魚の年齢査定結果に基づいて推定した2004年以降の同海域の年齢別漁獲尾数,および体長組成と漁獲物銘柄組成から推定されたオホーツク海域の年齢別漁獲尾数を合算して,1985年以降のホッケ道北群の年齢別漁獲尾数データセットを作成した。このデータセットを半年ステップのVPAで解析することにより,漁期ごとの年齢別資源尾数および資源重量と年齢別漁獲係数の推定を行った++第5章では,本種の再生産関係を明らかにするために,雌魚の成熟様式を調べ,年齢別成熟率を推定した。まず,卵巣の組織観察により9段階の卵母細胞発達段階,および7段階の卵巣成熟段階を定義した。次に,月別に卵巣成熟段階ごとの出現状況を調べた結果,雌魚の卵黄蓄積は8月以降に開始されていたことから,卵黄蓄積の開始がその年の産卵期に向けた成熟の開始を示す指標であると考えられた。その一方で,9月後半にはすでに吸水した卵母細胞が出現したことから,本種の成熟開始から排卵までの卵巣発達は,年周期的かつ1~2ヶ月の短期間に起こることが示された。吸水期以降の卵母細胞を持つ個体では,卵母細胞径1000μm以上に複数のモードが観察されたと同時に,表層胞期から卵黄球期に相当する径の卵母細胞頻度の減少が観察された。これらのことから,本種雌魚の成熟様式は,卵群同期発達-1産卵期複数回産卵型に分類された。一般にこのタイプの魚類は成熟開始直後にその年の最大産卵数が決定することから,本種でも雌魚1尾あたりの産卵量がその体重に依存すると仮定することで,SSBを産卵量の指標として利用可能であることが示された。年齢と成熟率との関係を調べたところ,年にかかわらず0歳魚は成熟せず,2歳魚以上はほぼすべての個体が成熟するが,1歳魚では成熟する個体としない個体が存在し,成熟率は2007年では0.89,2008年では0.66と異なる値が推定された。これら雌1歳魚の平均体長は,2007年では250mm以上であったが,2008年では250mm未満であった。雌魚の成熟割合と体長との関係を調べたところ,50%成熟体長が240mm付近にあった。これらのことから,雌2歳魚以上の体長は,推定された50%成熟体長よりはるかに大きいため,ほぼすべての個体が成熟するが,1歳魚の場合は,産卵期までの成長により1歳時の成熟率が大きく変化する可能性があると考えられた。年齢別成熟率とVPAで推定された年齢別資源量を用いて年ごとのSSBを推定し,加入尾数との関係を検討したところ,リッカー型の再生産関係が推定された。この関係を加入量予測モデルとして利用することで,本種ではSSB管理による加入量制御が可能なことが示された++本研究により,VPAを基本骨格としたホッケ道北群の資源解析が可能になった。さらに,再生産関係モデルを組み合わせて,シミュレーションによる管理効果の検討も可能になった。また,本種に導入したVPAは半年ステップで計算を行う構造なので,海域・漁業種別だけでなく,上半期と下半期の漁期別に条件を設定して予測することが可能である++これらの結果を活用することで,漁期・海域・漁業種類別に条件設定した様々な管理方策案について,その効果とリスクに基づいて議論し,選択することが可能となり,このことは本種の持続的な利用に大きく貢献すると考えられる。
Hokkaido University(北海道大学). 博士(環境科学)
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