Thesis or Dissertation 北海道日本海海域におけるホッコクアカエビの資源評価と資源管理方策に関する研究 [全文の要約]

山口, 浩志

2015-09-25
Description
北海道日本海海域のホッコクアカエビについて,科学的根拠に基づいた精度の高い資源状態の評価を行う必要が ある。そのため,年齢構成モデルによる資源量推定を行うことを試みた。年齢形質のない甲殻類資源の年齢別漁獲 尾数を推定するため,甲長組成解析を行い,成長の年変動を考慮した年齢別漁獲尾数の推定方法を確立した。推定 された年齢別漁獲尾数から年齢構成を用いた資源量推定モデルであるVirtual Papulation Analysis(VPA)により 資源量を推定した。当該資源の資源状態は,漁獲努力量の削減や網目の拡大により,1990年代から2000年代初めに かけて資源が回復したが,その後,再生産関係の悪化により減少傾向にあると考えられた。VPAの推定値である年 齢別漁獲係数を用いて,加入量あたり漁獲量・漁獲金額・産卵量解析を行った結果,漁業収益を確保しつつ,産卵 親魚量の生き残りを増やすためには漁獲選択性の変化が重要であることを明らかにした。 産卵親魚量の生き残りを増やすための漁獲選択性を変化させる方法として,漁具から一定のサイズ以下を逃がす 方法(網目の拡大),および小型サイズや産卵期に集群する個体が集まる時期や場所で漁業を行わない(禁漁区, 禁漁期)方法が挙げられた。 えびかごの網目拡大について検討するため,複数の目合のえびかごを用いた比較操業実験を行った。網の素材や 結節の有無の影響を考慮し,ホッコクアカエビに対するえびかごの網目選択性のマスターカーブを推定した。網目 選択性のモデルはlogisticモデルが最適であり,網目選択性は目合だけでなく網地の素材(ナイロンおよびポリエス テル)も影響していることを明らかにした。また,抱卵個体に対しては,脚長19.13mm(9節)未満のかごに入っ た個体はすべて網目を抜けないことが明らかになった。また,マスターカーブから比較操業実験では用いなかった9. 5節,現行目合の10節および9節の銘柄別漁獲量について検討した。9節では単価の高い大銘柄の個体の漁獲量も大幅 に減少することが明らかになり,9.5節がえびかごの網目を拡大する場合の目合の候補であると考えられた。 禁漁区の効果を検討するため,えびかご漁業の詳細な操業日誌を解析した。武蔵堆周辺海域の緯度経度5分升目に よって区切られた海区ごとの銘柄別漁獲量と投かご数のデータから,海区別CPUEを求め,当該資源の発育段階別 の分布を明らかにした。翌年幼生をふ化させる親エビは,抱卵後6月には水深400m以深に多く分布する傾向があり, その後,冬季にかけて水深200-300mの大陸棚縁辺部に移動した。12~1月のふ化時期直前には,年間で最も海区別 CPUEが高くなり,高密度で分布していたと考えられる。また,武蔵堆東部の天狗の鼻と呼ばれる海域に集中して 分布していることを明らかにした。これらの結果から,これまで,4~5月に設置していた産卵期保護のための禁漁 区の効果が小さいことと,12~1月の天狗の鼻海域の禁漁区の漁獲係数削減効果について検討した。また,禁漁期の 設定時期検討するため,漁獲成績報告書による月別操業日数と年齢別漁獲尾数推定のための詳細データである月別 年齢別漁獲尾数データを用い検討した。その結果,9~10月に4,5歳の若齢エビ,12~1月に抱卵雌に相当する年齢 のエビが多く漁獲されていることが明らかになった。最適な禁漁期の効果について検討するため,禁漁期を設定し た場合の年齢別漁獲係数の比を推定した。その結果を用い,時期や期間別の禁漁区,禁漁期の効果を検討するため, 加入量あたり漁獲量,漁獲金額,産卵量解析を行った。その結果,同じ1ヶ月間の禁漁期間では9月または10月の若 齢エビを保護対象とした禁漁期の設定のほうが,12月または1月の抱卵個体を対象とした禁漁期よりも効果が高い ことが明らかになった。また,%SPRの改善効果は小さく,複数の資源管理方策を組み合わせる必要があることが 示された。 以上の研究により検討された漁獲選択性を変化させるための資源管理方策(テクニカルコントロール)に加え, 漁獲努力量の削減(インプットコントロール),漁獲量の上限設定(アウトプットコントロール)の資源管理方策 により資源管理を行った場合の,資源管理効果を評価するためオペレーティングモデルによる検討を行った。オペ レーティングモデルには,第3章で構築した年齢構成モデルを用い,加入量の決定にはHockey-stick型の再生産関 係を採用した。TACの設定は,Fmsyを漁獲係数の上限,Blimitを1998~2009年の再生産関係に基づくFmedとHo ckey-stock型の再生産関係の漸近線との交点である産卵親魚量ととし,予防的措置を適用したABC算定規則により 決定した。ここで,資源評価とTAC実行にタイムラグはないものとした。シミュレーションの期間は,2014~204 3年の30年間とし,乱数列を変えて1000回シミュレーションを行った。なお,考慮した不確実性は,加入量変動, 資源量の推定誤差および漁獲の実行誤差とした。資源管理方策の評価指標として,1)30年間の平均漁獲量,2)3 0年後の産卵親魚量,3)30年後の産卵親魚量がBlimitを上回る確率とした。シミュレーションの結果,現状の漁業 を継続すると,資源量,産卵親魚量および漁獲量は過去最低を下回る水準にまで減少した。平均漁獲量の中央値は, テクニカルコントロールによる資源管理に対して,アウトプットコントロールのほうが少なかった。一方で,30年 後の産卵親魚量の中央値は,前者よりも後者のほうが多くなり,資源管理の効果と得られる漁獲量との関係にトレ ードオフの関係が見いだされた。インプットコントロールでは,漁獲努力量の削減率が高くなればなるほど,産卵 親魚量は多くなったが,得られる漁獲量は多くならなかった。さらに,TACによる資源管理では漁獲量の変動が大 きく漁業経営の安定が妨げられる可能性があるのに対して,テクニカルコントロールとインプットコントロールで はその変動は小さいことが示された。なお,シミュレーションでは資源量が0(資源管理の失敗)になる試行結果は なかった。 本研究では,考えられる各種資源管理方策の効果について定量的に示した。これらの結果は,実効性のある資源 管理方策を組み込んだ資源管理計画を作成するための判断材料となると考えられる。
Hokkaido University(北海道大学). 博士(環境科学)
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