Thesis or Dissertation Electrochemical interface in fuel cell reactions [an abstract of entire text]

兒玉, 健作

2015-09-25
Description
固体高分子型燃料電池(PEFC)では電極触媒として貴金属である白金(Pt)が使用されており、その使用量低減がPEFC実用化の鍵となっている。触媒を最大限活用するためには、反応を阻害する酸化物やアニオンなどの白金上吸着物質の被覆率を可能な限り小さくする必要がある。そのためには、種々の吸着物質の電気化学環境下での振舞いならびに燃料電池反応(水素酸化反応(HOR)、酸素遯元反応(ORR)、メタノール酸化反応など)の速度に対する影響を定量的に評価する必要がある。本論文では、PEFCの燃料極あるいは空気極を模擬したモデル電極による実験から、燃料電池反応逭行中の種々の吸着物質の役割を解明することを目的とする。第一章で序論を述べ、第二章で実験・解析手法の説明を行う。それ以降は以下の構成からなる。 第三章では、PEFC空気極において最も基本的な反応阻害因子である白金酸化物に注目した。これまで、白金酸化物については正確な構造、および酸化物生成メカニズムについて、統一した説明がなされてこなかった。この課題の解決に向けた第一歩として、最も単純なモデル表面であるPt(111)上の酸化物生成速度の電位依存性を調べた。その結果、この反応速度が、非常に大きな電位依存性(小さなTafel勾郤;~20mV・decade-1)を持つことを見出した。この実験結果は、これまで最も受け入れられてきた酸化物生成モデルである内邪酸化(subsurface-oxidationまたはplace-exchange)モデルでは説明できないことが分かり、それに代わるモデルとして、酸化物生成反応が、速い電子移動素遃程と、それに続く逼い遃程との組み合わせから成るというメカニズムを提案した。つづいて、ORRにおける反応中間体としての白金酸化物の特性を調べるため、PEFC空気極電位領域、0.8-1.0Vにおいて、Pt(111)上ORR反応次数を実験的に求めた。その際、従来の解析法より精度よく体系的に反応次数を見積もる方法を提案した。実験の結果、ORR反応次数は酸においては1、アルカリにおいては0.5-0.9であることが分かった。これは、酸中では反応速度が増加しても反応中間体が電極表面に溜まらないこと、アルカリ中では反応速度の増加とともにそれが溜まることを示している。現時点で酸とアルカリとでのORRメカニズムの遊いを解明するには至っていないが、少なくとも酸環境のプロトン交換型のPEFCにおいては、ORR逭行中に反応中間体の被覆率は変化しないため、ORR速度を議論する際、反応中間体以外の吸着物質 (spectator-species:水が酸化することにより生成する酸化物や、アイオノマ高分子中のアニオンなど)の被覆率のみに注目すればよいことが分かった。 第四章では、電気化学反応におけるspectator-speciesの役割をより深く理解できる系として、アルカリ中Pt電極上メタノール酸化およびバルクCO酸化へのカチオン種の影響を調べた。従来、水系の電解液における電位窓、0-1.5V(水素電極基準)では、アルカリ(土類)金属カチオンはPt電極表面に共有結合的に吸着しないため、電極反応の阻害因子にはなり得ないと考えられてきた。しかし、本論文の研究により、この概念が誤りであり、アルカリ(土類)金属カチオンは、Pt電極上の水酸化物(OH(ads))を介した非共有結合性相互作用により電極近傍に水和クラスタを形成し、spectator-spciesとして上記反応に影響を与えることが見出された。バルクCO酸化反応の解析においては、OH(ads)被覆率が大きい場合のみ非共有結合性相互作用の影響が現われることが明確に示され、上記クラスタモデルが正しいことが裏付けられた。 第五章では、PEFC開発に向けた実践的な系として、Pt/アイオノマ界面を扱った。近年、アイオノマ物性がPEFCの性能に大きく影響することが分かっている。そこでまず、新規アイオノマ開発に向けたベンチマークとして、現在アイオノマとして主に用いられているパーフルオロスルホン酸ポリマ(PFSA、例えばNafion®)について、スルホン酸アニオンのPtへの吸着量およびそのORRへの影響を、Pt単結晶(111)電極を用いて定量的に評価した。この定量評価は、電極表面をアイオノマで均一に被覆する方法を確立したことで可能となっている。実験の結果、NafionでPt電極を被覆した場合、高分子中のスルホン酸アニオンは被覆率0.07モノレイヤでPtに吸着し、PtのORR活性は70%低下することが明らかになった。これは、Pt表面の30%しか触媒として活用できていないことを意味する。つづいて、Pt/アイオノマ界面を乾燥条件下で解析するため、Pt単結晶用固体電気化学セルを開発した。これにより、Pt(111)単結晶の明確なサイクリックボルタモグラムを固体セルで測定することに初めて成功し、スルホン酸アニオンのPtへの吸着性が、アイオノマの乾燥とともに増加することを見出した。この事実は、PEFCを低加湿で遀転する際に重要な知見となる。さらに、アイオノマによる触媒被毒の抑制に向け、PFSAとアニオン構造の異なる、2官能型パーフルオロスルホンイミド酸アイオノマ(NBC4)の触媒被毒性を評価した。その結果、NBC4で被覆したPt(111)電極は、Nafionで被覆したそれよりアニオン被毒が少なく、ORR活性が50%高いことが分かった。これは、スルホンイミドのように嵩高い酸基構造にすることで、アイオノマの触媒被毒を低減できる可能性を示しており、新規アイオノマの分子構造の設計に役立つ知見である。論文の最後では、現在取り組んでいる、表面増強赤外吸収分光法(SEIRAS)を用いたPt/アイオノマ界面の解析について、手法の詳細やこれまで得られている結果を紹介した。電位スイープ中のSEIRAスペクトルにおいて、Ptに吸着したスルホン酸アニオンに由来すると思われるバンドが1400cm-1付近に見つかり、また、Nafionのパーフルオロ骨格邪分(主鎖・側鎖)や水分子の動きに由来すると思われるスペクトルの電位依存性を確認することができた。したがって、本手法の活用により、Pt/アイオノマ界面の全容が解明されることが期待される。 以上のように、白金電極上の種々の吸着物質の生成反応速度、被覆率、燃料電池反応に対する影響などを定量的に評価することで、今後のPEFC開発に役立つ知見が具体的に示された。
Hokkaido University(北海道大学). 博士(環境科学)
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