学位論文 ギガヘルツ弾性表面波時間分解イメージング法における任意周波数測定実現のための研究

兼子, 翔伍

2015-03-25
内容記述
弾性表面波は物質の表面近傍に局在して伝播する弾性波のモードである。現在では、数メガ~ 数ギガヘルツの弾性表面波は機械部品・構造物表面近傍の傷の検査をはじめ、ギガヘルツ帯無線 通信機器のフィルタ素子などに応用される。一方、近年ではギガヘルツ帯の弾性表面波を対象と するフォノニック結晶・メタマテリアルの作製、それらを用いた導波路伝播、負屈折、超分解レ ンジング、クローキングなどの現象の研究が進められている。それとともに弾性表面波伝播特性 の制御性は向上し、その応用の可能性は着々と拡大している。 さて、1980 年代の超短パルスレーザーおよびそれを用いた分光法の発展を機に、ギガヘルツ~ テラヘルツという高周波数帯の弾性波の励起、そして時間領域の測定が比較的に容易に行えるよ うになった。そのような時間分解測定法の1 つにピコ秒音響法がある。その試料表面近傍の弾性 波を観測する手法と、2 次元走査機構および複素反射率の振幅または位相成分を選択的に測定可 能な光学干渉計を組み込んだ系の構築により、ギガヘルツ帯の弾性表面波伝播の時間分解イメー ジング(以下、ギガヘルツ弾性表面波時間分解イメージング法)が可能である。時間領域の測定 に加え、空間的な音場分布を取得することで、ギガヘルツ帯の弾性表面波伝播の様子は動画のよ うに可視化される。また、可視化のみならず、メガ~ギガヘルツに及ぶ幅広い励起周波数成分と 時空間分布のデータ取得は、時空間Fourier 解析により周波数・波数空間における分散曲線また は曲面の観測を可能にする。そのような解析手法は材料・構造の弾性的な伝播特性研究、特にフ ォノニック結晶・メタマテリアルのバンド構造の観測にも有用である。しかし、所望の周波数で 周波数・波数空間のマッピングを行うには現状解決すべき課題が存在する。上記手法の下地にあ たるポンプ・プローブ測定にて測定される周波数成分は、原理的制約のため通常は離散的で実験 系ごとに固定である。周波数走査性の不足のため、狙った周波数での測定が困難となる。そのた め一般的に複雑な分散関係を示すフォノニック結晶・メタマテリアルや、高い𝑄値での共振を示 す構造などへの適応性は自ずと低くなってしまう。 本研究では既存のギガヘルツ弾性表面波時間分解イメージング法に存在する測定周波数の制約 を克服し任意周波数測定を可能にすることで、同手法の発展と適用範囲拡大を目指した。本研究 で提案するのはポンプ・プローブ測定における励起光の強度変調から、励起周波数を制御する手 法である。励起光の強度変調は、ロックインアンプを用いたポンプ・プローブ測定の信号対雑音 比向上のために以前から行われていたことであるが、ロックイン検出による時間信号取得の複雑 化のため、任意周波数測定として充分に利用されてはいなかった。本研究ではそのような時間信 号取得に対する周波数解析方法を理論的に開発し、理論の正当性を確認する実験系を構築し、試 用した。その結果は有意義なもので、新手法は今後ギガヘルツ帯の弾性表面波を対象とするフォ ノニックバンドギャップや共振器の共振モードの測定に有用な手法となることが期待される。ま た、ポンプ・プローブ測定における測定周波数の制約の克服は、超音波関連に限らず、同様の周 波数帯を持つ現象を対象とした他分野の分光測定への貢献も期待される。
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Hokkaido University(北海道大学). 博士(工学)
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